概要

梅毒は 梅毒トレポネーマ（Treponema pallidum） という細菌によって起こる性感染症です。主に性行為を通じて感染し、近年日本で急増しています。厚生労働省の発表によると、2023年には報告数が1万4千人を超え、過去最多を記録しました 。
初期の症状は軽く、自然に治ったように見えることもありますが、菌は体内に残り、放置すると数年後に心臓や神経に重い障害を残すことがあります。

感染経路

• 性行為（膣性交、肛門性交、口腔性交）
• 母子感染（妊娠中の母から胎児へ）
• 傷口を介した血液・体液の接触

＜コンドームで防げる？＞
コンドームは梅毒の感染リスクを 大きく減らすことができます。性器や粘膜の直接的な接触を防ぐからです。
しかし梅毒の病変（しこりや発疹）は、性器だけでなく肛門周囲、太もも、口の周りなど コンドームで覆えない部位 にできることがあります。そのため、コンドームを使っても完全には防ぎきれません。
つまり、「コンドームで予防できるが100％ではない」 という点が重要です。

症状の経過

• 第1期（感染から約3週間後）
  性器や口に硬いしこりや潰瘍（硬性下疳）ができる。痛みは少ない。
• 第2期（数か月後）
  全身に赤い発疹（バラ疹）、リンパ節の腫れ、発熱。手のひら・足の裏に出ることもある。
• 潜伏期
  症状は消えるが体内には菌が残る。
• 第3・4期（数年〜数十年後）
  心臓や血管、脳や神経に障害（まひ、認知機能低下、大動脈瘤など）。

診断

• 血液検査（RPR法、TPHA法など）で梅毒抗体を調べる
• 妊婦健診では妊娠三ヶ月目に全員が梅毒検査を受けることになっていますが、それ以降に感染した場合は、生まれた胎児に異常があって母体の梅毒感染が判明する場合があります

治療

• ペニシリン系抗菌薬（注射または内服）が第一選択
• 早期に治療すれば数週間で完治可能
• パートナーも同時に検査・治療することが重要

予後

早期に治療すれば完治しますが、治療せず放置すると全身に重い後遺症を残すことがあります。妊娠中の梅毒は胎児に感染し「先天梅毒」を起こす可能性があるため、妊婦さんの検査と早期治療がとても大切です。

受診の目安

• 性行為後に性器や口にしこりや潰瘍ができた
• 原因不明の発疹やリンパ節の腫れがある
• パートナーが梅毒と診断された
• 妊娠中で感染の不安がある

まとめ

梅毒は現在、日本で急増している性感染症です。コンドームを正しく使用することで感染リスクは大きく減らせますが、完全には防げません。定期的な検査と、早期発見・早期治療が何より大切です。