概要

病原体と感染経路
日本脳炎は、フラビウイルス科の日本脳炎ウイルスが原因です。主にコガタアカイエカという蚊が媒介し、ブタなどの動物を増幅宿主として、人が刺されることで感染します。人から人に直接うつることはありません。

日本国内での発生状況
戦後は数千例が報告されましたが、ワクチン普及と蚊の対策により、現在は年間10例未満とまれです。ただし、九州・四国・本州西部では蚊やブタからウイルスが検出されており、日本国内でも油断はできません 。

定期接種制度
日本では生後6か月から7歳半までに合計4回接種することが定期予防接種として定められています。標準的なスケジュールは以下の通りです。

• 1期初回：生後6か月〜7歳半の間に2回（6日以上あけて）
• 1期追加：初回から約1年後に1回
• 2期：9歳で1回

この定期接種により、日本国内での発症は極めて少なくなりました。

日本で承認されているワクチン
現在、日本で承認されている日本脳炎ワクチンはVero細胞を用いた不活化ワクチンで、以下の2種類です。

• 乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン（エンセバック®）
• 乾燥日本脳炎ワクチン（ジェービックV®）

どちらも効果は高く、4回の定期接種で長期的な免疫が得られるとされています 。

海外ハイリスク地域
日本脳炎はアジアから西太平洋地域に広く分布しており、東南アジア・南アジアの農村部、雨季の時期にリスクが高まります。都市部でも散発的に報告があります。

症状と治療

多くは感染しても症状が出ません。しかし、発症すると高熱、頭痛、意識障害、けいれんなどを起こし、約25〜30％が死亡、回復しても半数以上で神経後遺症を残すことがあります。特異的な治療はなく、対症療法のみです。

予後

一度発症すると重篤な経過をたどることが多いため、予防接種が最も重要です。

ワクチンの効果と追加接種

定期接種を完了すれば長期にわたり有効な免疫が得られるとされます。海外長期滞在や現地居住の場合、必要に応じてブースター接種が推奨される場合があります。

受診・接種スケジュールのご相談

• 渡航予定・滞在地域・活動内容（農村滞在、動物接触、医療行為の予定など）で必要ワクチンが変わります。
• 既往歴・接種歴の確認と、出発までの日数に応じた計画が重要です（例：A型肝炎は2回目を6か月後、JEは最終接種を出発1週間以上前に）。
• 慢性疾患、妊娠、免疫不全、服薬中の方は個別評価が必要です。