概要

気管支喘息は、気道（空気の通り道）に慢性的な炎症が起こり、刺激に敏感になって 咳・ゼーゼー（喘鳴）・息苦しさ が繰り返し出る病気です。炎症を抑える治療を続ければ、多くの方は普通の生活や運動が可能です。
ただし注意すべきは、普段症状が軽い人でも、突然重い発作を起こすことがある点です。国際ガイドライン では「軽症に見えても重症発作や死亡のリスクがあるため、吸入ステロイドを含む治療を早期から行うべき」とされています。

成人発症と小児期発症の違い
喘息の背景は年齢で異なります。

• 小児期発症はアトピー体質が関与しやすく、ダニやスギ花粉に反応することが多いです。湿疹やアレルギー性鼻炎を併発する子どもも少なくありません。成長に伴い軽くなることもあります。
• 成人発症は、喫煙・職業での粉じん吸入・慢性副鼻腔炎などがきっかけになり、特に女性では更年期以降や肥満を背景に発症しやすいことが知られています 。

主な症状

• 夜間や早朝に出やすい 咳（咳だけのタイプもあります）
• ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音
• 胸の圧迫感や息苦しさ
• 気圧や天気の変化、アレルギー暴露、運動などで悪化

合併しやすい病気と生活習慣の影響

• アレルギー性鼻炎：鼻炎を合併する人は多く、鼻づまりがあると喘息も悪化しやすくなります。鼻炎治療で喘息のコントロール改善に役立ちます 。
• 肥満（特に女性）：肥満は発症や悪化のリスクを上げ、体重を減らすことで症状や肺機能が改善することが報告されています  。
• 睡眠時無呼吸症候群（OSAS）：合併が珍しくなく、CPAP治療で喘息症状が改善することが複数の研究で示されています   。

日本での喘息死亡の推移
日本では喘息で亡くなる方は1990年代には年間約7,000人いましたが、吸入ステロイド薬の普及で大幅に減り、近年は年間1,000人前後にまで改善しています 。しかしゼロではなく、適切な治療を怠ると今でも命に関わります。

検査と診断

• 問診や聴診
• 呼吸機能検査（スパイロメトリー）：気道の狭さを評価
• 呼気中一酸化窒素（FeNO）：気道の炎症を推定
• 血液検査（IgE抗体）：アレルギーの有無を確認

治療

基本は吸入薬
喘息治療は「気道の炎症を抑えること」が中心です。

• ICS（吸入ステロイド）：最も基本の薬。軽症でも必要です 。
• ICS/LABA（二剤吸入薬）：症状が続く場合に使います。気管支を広げる作用と炎症を抑える作用を組み合わせます。
• ICS/LABA/LAMA（三剤吸入薬）：さらにLAMA（長時間作用型抗コリン薬）を加えたもので、肺機能や発作の抑制に効果があります。
  • CAPTAIN試験では、ICS/LABAにLAMAを追加することで肺機能が有意に改善しました 。
  • IRIDIUM試験では、三剤で肺機能の改善と発作リスク低下が確認されました  。

予後と生活習慣

• 適切に治療を続ければ、日常生活に大きな制限はありません。
• ただし、薬を中断すると重症発作のリスクがあります。
• 肥満がある場合は減量が有効で、アレルギー性鼻炎や睡眠時無呼吸の治療も喘息改善につながります。

受診の目安

• 夜間や早朝に咳が続く
• ゼーゼー・ヒューヒューと呼吸音がする
• 運動や天候の変化で息苦しくなる
• 市販薬で改善しない
• 過去に強い発作を起こした